腸 活

ヒミツの小腸(後編)
膵液・胆汁も大活躍! 小さく分解して体内へ

 

こんにちは。薬局ぽっぽの大平です。

前編ではヒトの食事の歴史、腸の構造には特徴があることをお話ししました。

後編では小腸、特に十二指腸ではどのように食べ物が吸収されるのかについてお話ししていきたいと思います。

酸性→中性へ! 腸壁を守る「膵液」

胃で殺菌、消化された食べ物は十二指腸へと送られ、十二指腸ではさらに細かく食べ物を消化し、吸収されます。その過程には主に消化酵素などが関わってきます。

十二指腸で主に分泌される消化酵素は膵液(すいえき)という液体に含まれています。

膵液(すいえき)は、膵臓で分泌される体液(消化液)である。三大栄養素の全てを消化できる。食後、膵管から十二指腸へと出る。

膵液は膵臓という臓器で作られるものですが、膵液は膵臓から管を通って十二指腸に運ばれて食べ物の消化をします。

十二指腸には胃で消化、殺菌された状態で流れ込んでくるため食べ物は酸性の状態になっています。胃の壁は胃酸に強い構造になっていますが、小腸や大腸はそうではありません。そのまま食べ物が運ばれてくれば小腸の壁が酸によって攻撃を受けてしまいます。

そこで膵液の出番です。十二指腸に運ばれてきた膵液には、胃酸によって酸性になっている食べ物を中性に戻す働きと、消化酵素による炭水化物やタンパク質を分解する働きがあります。

腸の壁は膵液のおかげで守られているといっても過言ではありません。

そして、十二指腸では膵液のほかに、胆汁(だんじゅう)という大事な物質も関わってきます。胆汁は肝臓で作られる液体で、作られた後に胆のうという臓器で蓄えられ、膵液と同じく食事のたびに管を通って十二指腸に運ばれます。

胆汁(たんじゅう)は、肝臓で生成される黄褐色でアルカリ性の液体である。

胆汁には消化酵素は含まれていません。ただ、その代わりに脂を水になじませる働きがあります。

言葉にすると簡潔ですが、これだけでは胆汁の重要性が少し分かりにくいですね。

「胆汁」は石鹸?! 水と油を混ぜて脂肪を分解

「水と油の関係」という言葉があるように、一般的に油は水には溶けません。
それは食べ物についても同じで、脂肪(油)のものと水っぽいものは混ざらずに胃を通って十二指腸に到達します。

十二指腸に到達するまでは混ざっていなくても何も問題はないのですが、十二指腸で消化、吸収を行うには非常に大きな問題となってしまいます。

それは、脂肪を分解する消化酵素は水に溶けているということです。

脂肪を分解するためには消化酵素と脂肪がくっついていることが必要になりますが、消化酵素を含む水と脂肪は接触することができないために脂肪を分解することができないのです。

それでは脂肪の消化にかなりの時間がかかってしまいますし、あまり時間がかかりすぎると腸に負担がかかりすぎてしまいます。

そこで胆汁の出番というわけです。胆汁はいわゆる石鹸のような働きで、脂肪と水を混ぜる作用があります。その働きにより消化酵素が脂肪に触れられるようになるので脂肪を分解させることができます。

これらの消化酵素によって消化された炭水化物、脂質、タンパク質は小腸の膜にある、それぞれの成分に対応した小さな穴などを通過して体の中へと吸収されていきます。

炭水化物が細かく分解されると単糖類(主にブドウ糖など)に、同様にタンパク質はアミノ酸になります。逆にいうと、小さい糖(ブドウ糖などの単糖類)がたくさんくっついた形を炭水化物、アミノ酸がたくさん集まった形をタンパク質というわけです。

安全で確実な栄養補給には長~い吸収時間が必要なのです

ここで疑問に思うことがあります。そんなに様々な酵素やホルモンを駆使した複雑な消化や吸収のシステムに頼らなくても、食べたものを少し細かくするくらいで吸収させることができれば時間もエネルギーもかからずに効率が良いではないかということです。

結論から述べると、この方法はデメリットが多くヒトの体には適していません。

成分の集合体であるタンパク質や炭水化物などはサイズが大きいため、そのままの状態で吸収させようとすると小腸の壁に大きな穴が必要となり、結果として吸収させたい栄養と全く関係のない異物やバイ菌が侵入する可能性が高まってしまいます。

そういうことが起こらないように、成分を小さく分解することで安全で確実に栄養を体に補うことができるのです。

また、細かく分解された成分で体内に入ることで、体の必要としている部位に迅速に送り届けることもできます。

吸収に時間をかけることはデメリットばかりに思えてメリットがたくさんあるわけですね。

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