漢方のお悩み

症状によって変わる熱中症のための漢方薬

こんにちは、薬局ぽっぽの大平です。

急に気温が上がってきて、湿度も高くて少し歩くだけでも汗をかくような日が増えてきました。毎年同じなのですが、これからは本格的に夏、どんどん暑くなっていきます。

そんな暑い季節を迎えるにあたって、心配になることといえば、やっぱり「熱中症」です。

今回は、熱中症と漢方のお話しです。

漢方の熱中症は「湿熱」と「陰虚」の2つ

中医学では、病態の基本を表す「実(じつ)」「虚(きょ)」に、病気の姿を表す「証」とあわせて、「実証」「虚証」という言葉があります。

実証は、体内に異物が存在している状態をいいます。異物が体内にあることで気や血、水などの流れをせき止めてしまったり、臓腑の機能を止めてしまいます。

虚証は、本来体に必要な成分(気や血、津液など)が不足している状態です。エネルギー源が不足してしまうことで、疲れやすくなったり、冷え性などの症状を引き起こしてしまいます。

熱中症は、何かしらの原因で体内に熱がこもり、体温が異常に上昇してしまう状態をいいます。多くの場合、汗をかきすぎることで体内の水分を失っているため、脱水症ともいいます。

原因は暑邪(しょじゃ)!

漢方では、実証と虚証の観点から、熱中症を大きく「湿熱証」「陰虚証」の2つに分類しています。

湿熱証と陰虚証ともに大きく関わるのが、気温が上がる夏場に体調不良の原因となる熱の邪気「暑邪」です。

暑邪は、体内を循環している水分である「津液(しんえき)」に大きく影響します。

水の流れが悪くなる湿熱証

湿熱証は、暑邪によって津液の流れが悪くなることから起こります。

体内の水の流れが滞ると、体内にこもった熱を冷ますことができません。津液がその場にとどまってしまう状態を「湿」といい、熱によって湿の状態になることを湿熱といいます。

湿熱証のとき、漢方の治療では、湿を取り除きつつ、体の余分な熱を冷ます清熱利湿作用のある漢方薬を用います。

水分が足らなくなる陰湿証

陰虚証は、暑邪が原因で津液が外に出てしまい、不足してしまう状態です。

津液が足らないと、体内にこもった余分な熱を冷ますことができず、高熱が出てしまいます。そんな場合には、陰を補う漢方薬を用います。

また、陰虚証の患者さんは、「気」が不足する「気虚」も一緒に現れることがあります。

気は体のエネルギー源となる物質で、汗をかきすぎないよう汗腺を引き締める作用もあります。気が足らなくなると、汗をかきすぎて脱水症状を引き起こす可能性があるのです。

そのため、気虚で熱中症の症状が現れている場合には、陰を補うだけでなく、気を補う補気薬も用いる必要があります。

処方には症状の見極めが大切!

同じ暑邪が原因で起こる熱中症でも、湿熱と陰虚では対処法が違うため注意が必要です。

たとえば、湿熱のときに使う余分な異物を取り除く漢方薬を陰虚証の患者さんに使ってしまうと、陰の不足は改善されず、余計に症状が悪化してしまう可能性もあります。漢方薬の選択には症状の見極めが大切になります。

軽度の熱中症なら漢方約+経口補水液で効果も

同じ熱中症でもさまざまな原因があります。その原因にあわせて漢方薬を用いることで速やかな改善が期待できます。

また、熱中症には漢方薬による治療だけでなく、経口補水液の摂取もとても大切です。以前別の記事(いよいよ夏本番! 「熱中症」にご用心! ― その4)にも書いていますので、ぜひ参考にしてください。

今回、熱中症の漢方治療についてお話しましたが、これはあくまで軽症の場合の対処方法です。明らかに高熱がある場合、意識がもうろうとする場合には、ためらわずに救急車を呼んでください!

 

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